エコー検査 

エコーは診療で欠かせない検査です。エコー検査は音の反射を利用して臓器を画像化する仕組みで、高性能の聴診器のようなものです。昔の名医は、たたいたり押したりして内部の状況を推測していたはずですが、今はエコーのおかげで研修医でも「あっ、これは肝臓癌だろう。」と判断することが可能になりました。  


「私は毎年大腸検査を受けるが、エコーは受けたことがない。」という人がおられますが、検査の意味を取り違えているかも知れません。例えるなら、高級車でパーティー会場に行ったのにズボンを忘れているようなものです。 エコーは安全に短時間で検査できること、病気の経過を追えることで優れています。


エコーで分る病気は、内科関係では胆石が代表です。その他に肝臓癌、甲状腺腫瘍、心臓の機能、血管の詰まり具合などは検査しやすい事柄です。逆に検査しにくいのは、胃潰瘍、大腸癌、肺癌などです。万能ではありませんが、人を救う力が高い検査ですので、高度な聴診を受けるつもりで年1回くらいは検査されたほうがよいと思います。

エコー検査の欠点は、肥満体型の方の場合に見えにくいことです。また、例えばお腹のガスの向こう側に異常があっても、ガスに反射されて発見できないというのも問題です。癌の大きさを測ろうとして、ある日はどうやっても見えなくて困るけれど、翌日はガスが少なくてはっきり見えるということはよくあります。このような理由で、異常を見逃す可能性は常にあります。 


エコー検査の種類(検査場所と分る病気)を説明します。


首のエコー 
甲状腺のエコーで検査するのは、主に甲状腺に腫瘍があるかどうか、甲状腺の血流が亢進しているかどうか、もし腫瘍があったら癌の可能性がどうかを判断します。エコーで甲状腺腫瘍の種類まで確定できませんが、エコーだけで観察できることがほとんどになります。
リンパ節の評価にも使えます。手で触っても分らないリンパ節が、エコーでははっきり見えます。大きさによっては質的な判断(悪性か否か)も、かなりできることがあります。


首の血管の評価(頚部血管エコー)
最近はどこの病院でもやるようになりました。動脈硬化の具合や、脳に入っていく血管の流れ具合が分りますので、これで脳卒中の予防や治療方針が決まることがあります。 


心臓のエコー(心エコー) 
心臓のエコーは、心臓の動きから心筋梗塞の有無、心不全の評価、心臓の大きさ、弁膜症の有無、肺の血管が詰まったかどうか、心臓の周りの炎症の有無など、たくさんのことが分ります。 胸を自殺目的で突いた患者さんを診たことがありますが、エコーにより瞬時に「心臓に刃物が到達している!」と判断できました。緊急の際の早い判断ができます。


乳房のエコー 
若い女性の場合は乳腺が発達しているため、レントゲンだけでは癌と判断しにくい場合があります。 

腹部エコー 
癌に関しては、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、前立腺、子宮体部、卵巣の、それぞれについてエコーが最も便利な検査です。癌の大きさ、種類、転移の有無などが、かなり分ります。
お腹の血管については、動脈瘤の有無、周辺のリンパ節が腫れていないかの評価が大事になります。動脈閉塞症が写ることもあります。 
胃癌や大腸癌が写ることもあります。これは癌の周りに液体がたまっていることが必要ですので、いつも可能だとは限りません。 胆石や胆嚢ポリープは観察できますが、胃や大腸のポリープは見えません。 腸炎はかなり判断できます。腸が詰まった(イレウス)がどうかもよく解ります。
子宮の奥の癌や子宮筋腫、卵巣癌、胎児の状況なども、よく見えます。子宮の出口(子宮頚部)の癌は、ほとんど解りません。


末梢エコー 
突然血管が詰まる病気の時は、閉塞場所を特定できます。関節ほうが膨れているか、膿瘍を作っているか、そして点滴を取りにくい人の場合に、血管の場所の特定をするのにも便利です。 


膣からのエコー 
お腹からのエコーでは、腸のガスが邪魔になって卵巣や子宮の状況が分らないことがありますが、膣を通して見るとよく見えます。婦人科の病気全般で使われます。


平成19年7月 診療所便りより