糖尿病の薬の注意点  勉強会平成21年12月17日 橋本 泰嘉 


今年の冬に新しい糖尿病の薬が発売されました。今日の勉強会では、この薬について紹介します。さらに、一般的な薬の注意点を復習します


ジャヌビア、グラクティヴ

この薬は、腸管から分泌されるホルモンの働きを助ける薬です。今までの糖尿病の薬とは働きが違う新しい薬です。 

腸管から分泌されるホルモンの名前はインクレチンと言います。インクレチンは膵臓に働きます。私たちが食事をした後に速やかにインスリンが分泌されるのは、食べ物が入った後にインクレチンが働いてインスリンの分泌を刺激しているからです。他に、インクレチンは膵臓を助ける作用があります。食欲にも関係しています。 


今回の新しい薬は、このインクレチンが分解されるのを遅らせることで、インクレチンの働きを強める効果があります。インクレチンを分解する酵素をDPP4と略するので、DPP4阻害剤と呼ばれます。 ここで頭の整理のために、糖尿病の飲み薬の種類をまとめてみます。一番下が今回発売された薬のことです。

種類

製品名

効果 特徴

欠点

SU剤

オイグルコンアマリール

インスリン分泌を刺激
強力に血糖を下げる

低血糖がある
二次無効

グルコシダーゼ阻害薬

ベイスン、グルコバイ

糖の吸収抑制

お腹の症状が出やすい

ビグアナイド薬

メルビン、メデット

インスリンの効果を助ける

乳酸アシドーシスの可能性

チアゾリジン

アクトス

インスリンの効果を助ける

浮腫の可能性

グリニド

ファスティック、スターシス

即効にインスリン分泌を刺激

弱め

DPP4阻害薬

ジャヌビア、グラクティヴ

さまざま

弱め

今回発売の新しい飲み薬が優れている点
1 低血糖を起こしにくい 
2 膵臓に負担をかけにくい 
3 肥満を生じにくい 
4 他の薬と併用できる 
5 一日1回の内服でよい


新しい飲み薬の欠点 
1 やや弱め 
2 胃腸症状が出る可能性 
3 値段が高い 
4 他のホルモンに作用する可能性がある
5 新しくて評価が確定していない 
6 処方日数制限



糖尿病薬の一般的な副作用

副作用

症状、所見

対処法、注意など

低血糖

さまざまな‘低血糖症状’ 低血糖の勉強会で述べた通り

ブドウ糖の摂取、グルカゴンの注射

下痢、腹痛、便秘、食欲不振、嘔吐

‘消化器症状’とまとめられることもあります

どの薬でも発生する可能性があります。

腸閉塞様症状、おなら、下痢

お腹が痛い、お腹がひどく張る

薬を徐々に増やして慣らす。胃腸薬を最初に併用する。

肝機能障害

症状がないこともあります 通常は血液検査でのAST、ALT異常を意味します。 

どの薬でも発生する可能性があります。薬の中止、または減量

劇症肝炎

肝機能障害の激しいもの 生命にかかわる状態

入院、集中治療

高アンモニア血症

意識障害が出ることもある

糖吸収抑制剤で出ることもある  薬の中止、アミノ酸製剤の使用

皮膚症状、発疹

掻痒発疹、痒み 激しい場合はショック状態

薬の中止、アレルギーの治療

光線過敏症

光に当たった部分が赤くなるなど

上記

貧血

症状がない場合も多い 高度になれば息切れや倦怠感など 

薬の中止、

顆粒球減少症(貧血の一種のようなもの)

発熱があることもある。

顆粒球は免疫に必要です

薬の中止、減量入院が必要なこともあります

血小板減少

高度になれば出血

調節薬の中止、減量

口内炎、味覚異常

口の中の痛み、味が解らなくなる

 

電解質異常

症状がないことが多い、意識が薄れることもある 

薬の中止、減量

高アミラーゼ血症

症状がないことが多い

稀に発生、禁酒

アルコール耐性低下 

アンタビュースと書かれていることも

禁酒



糖尿病薬の注意書


法律で定められた注意書きは非常に難解な文章ですが、要約すると以下のような内容です。調べる時のために書いておきますが、覚える必要はありません。文章は厚生省が責任を破棄するために作る傾向があり、科学的に検討されておらず、同種の薬でこうだったからこの薬も同じだろうという推測で作られていますので、本当の副作用を説明しているわけではありません。実際に文章の通りに使っていると病状が悪化することがあります。
 

妊婦には投与禁止 その薬に過敏症がある人には投与禁止 重症の感染症、手術前後、重篤な外傷の患者には投与禁止 下痢、嘔吐などの胃腸症状がある人は投与禁止 糖尿病性昏睡または前昏睡、重症ケトーシスには投与禁止 肝臓や腎臓が非常に悪い人には使用禁止 脳下垂体、副腎機能が低下した人は低血糖に注意が必要 食事の摂取が不規則な時は低血糖を起こしやすい 激しい筋肉運動の時には低血糖を起こしやすい アルコールを大量に飲む人では低血糖の原因になりやすい 高齢者では慎重に増量していく 糖尿病の診断が不確実な人には適応がない 食事療法や運動療法で効果不充分な時に使用を考える 少量から開始し、効果不充分な時は別な治療を考える 常に投与継続の可否、量の調節、薬剤の選択に注意すること 低血糖を起こすことがあるので、高所作業、運転には注意が必要 腎臓や肝臓が悪くなっても量の調整をしないでおかれると致命的な低血糖を生じることがある。腎不全の患者さんは、非常に用心する必要がある。


今年から糖尿病薬のひとつ「ボグリボース」を糖尿病の発症予防に使っても良いことになりましたが、これは例外で通常は明確な糖尿病でないかぎり薬を使うべきではありません。腎機能や肝臓の機能は、時には急に悪化します。その場合、糖尿病の薬を調節しないと危険です。でも実際には御自分の腎機能を感じ取ることなど難しいので、患者さんが用心しても実効性はありません。何かおかしければ病院に行かざるを得ないのが実情です。説明書を読んでも意味が判らない人は多いので、その点からも注意書(添付書)の効果は限定的です。




一般的な相互作用(併せ飲み)


これは大事です。医者や薬剤師も完全に理解していない人が多いので、目を通して下さい。もし、自分の薬が増える時には、併せ飲みになっていないか確認して下さい。鎮痛剤での低血糖、ステロイドでの高血糖が代表的です。

糖尿病薬の効果を強くし、低血糖を起こしやすい傾向がある

インスリン

他の糖尿病の薬

 

ワーファリン(血液をサラサラにする薬)

プロベネシド(尿酸の薬)

消炎鎮痛剤(痛み止め、解熱剤)

βブロッカー(血圧、心臓の薬)

サルファ剤(抗菌剤)

テトラサイクリン(抗生物質のひとつ)

フィブラート(中性脂肪の薬)

アゾール系薬品(水虫の薬)

 


血糖降下作用を弱める可能性があるもの

エピネフリン(喘息やショックの薬)

ステロイド(アレルギーなどの薬)

利尿剤

甲状腺ホルモン

卵胞ホルモン(女性ホルモン)

酢酸ブセレリン(ホルモン剤)

イノニアジド(結核の薬)

リファンピシン(結核の薬)

ピラジナミド(結核の薬)

フェノチアジン系薬剤(向精神薬)

フェニトイン(けいれんの薬)

ニコチン酸(ビタミン)



糖尿病の飲み薬の意味

ここで飲み薬の意味を説明したいと思います。 

糖尿病の薬の理想 
@ 血糖値を食前、食後とも正常近くまで抑える
A 薬によって肥満をきたさない
B 低血糖を起こさない
C 肝臓や腎臓、血管に害を及ぼさない
D 膵臓に負担をかけない
E コレステロールなどに悪影響を及ぼさない
F 奇形や発癌性の問題がない
G 合併症を悪化させない
H 値段が安い 一回の投薬で治療が終了する。


実際に上の条件を満たす薬はありません。薬には何かしら欠点があります。また、糖尿病の薬の使い方は非常に難しく、世界中探しても完璧に使える人はいないでしょう。では、そんなにややこしいなら薬は使わない方が良いかと言うと、そうではないようです。 様々な研究の結果を見ると、必要な場合は早めに薬を飲んでおいたほうが無難だと考えられます。


運動や食事療法は必須ですが、これを強調すると、自分には薬が必要ないのだと勘違いされる人が多くて、結果的に病状を悪化させることが多くなり、2回目に受診された時には失明している人もいます。必要と判断されたら、薬の治療を遅らせ過ぎてはいけません。少なくとも血糖が高めになった段階で、毎月確実に栄養士や医者と相談をできるようにしておくべきです。


薬の意味について、疑問にお答えする形で説明します。


@  
糖尿病なら、すぐ薬を飲んだほうが良いか?


誤解しやすい文ですが、間違いとは言えません。正しくは、「すぐ治療を始め、病院に通院、または連絡を取り合う必要がある。」です。
飲み薬には様々な問題点がありますが、飲んだほうが経過が良いことが多く、害を心配しすぎて飲まないのは正しくありません。風邪は、基本的に薬に頼り過ぎないほうがよい病気です。でも糖尿病では、「薬はなるべく飲まないで、ひどくなってから飲む。」という考え方では、経過を悪くします。病気の性格が違います。
「食事療法が治療の基本なので、安易に薬を処方しないこと」というのは理論的には正しいのですが、この言葉のために薬がないなら自分は軽いのかと勘違いして通院をしない患者さんが多く、そのために病状は悪化します。現実的には薬を飲んだ人のほうが経過が良いのは間違いありません。


A 薬は1回飲み出したら止められないのか? 


このように質問されることは多いのですが、この文章に対する答えは、「この質問には意味がありません」という厳しいものになります。お風呂の湯があふれ出した時に、「一度湯を止めると、あふれた時にまた止めないといけないから、そのままあふれさせておく。」と考える人はいないはずです。必要な時には必要なことをすべきです。
糖尿病は病気の性格から考えて、いちど治療すれば病気が治ってしまうと期待できませんので、治療して反応をみるしかありません。一回で治療が終わることを期待するのは止めて、いずれにせよ通院する必要があり、それなら薬でも飲んでやろうかと考えたほうが、むしろいいと思います。
実は薬が要らなくなる人はいます。食事療法や運動療法を熱心にやられた方は、薬を中止したままでおられる場合があります。ただし、血糖値が下がらないのに、「自分も、あの人達を目標に薬を飲まないで様子を見たい。」と考えられると、病状が悪化してしまうことが多いので、薬の治療を遅らせることに固執しないほうがいいと思います。明らかに薬が必要である時に、止められるかどうかを気にしても意味がありません。


B 糖尿病の薬で、膵臓が悪くなるのか? 


薬で膵臓に負担をかける可能性は、薬の種類によっても異なりますが、確かにあります。特にインスリンの分泌を刺激する薬は、膵臓に負担をかけると思われます。膵臓が繰り返し刺激されると、インスリンを作る細胞が減ってしまって、‘膵臓が疲れた’ような状態になります。そうすると、インスリンを出す力は落ちてしまいます。それなら飲まないほうがいいのでは?と考える人もおられますが、実際に薬を使わないでいると猛烈に血糖が高くなって合併症が出来上がってしまいますし、やはり同様にインスリンの分泌障害が出てきます。 合併症を防ぐために、血糖のコントロールを優先して考えたほうが良いと思います。


C血糖値が高い時は、薬が効きにくいのか 


血糖値が高いと「糖毒性」という不思議な現象が生じます。糖毒性は、高い血糖値に体が反応しきれなくて正常な代謝ができなくなった状態を意味し、特にインスリンの効果が落ちることや、インスリンの分泌を維持できなくなることが知られています。血糖値が高いこと、それ自体が病状を悪化させます。
このような場合の対処法は、血糖値をまず下げることです。いったん下げれば、本来の代謝を取り戻して食事療法や運動療法でコントロールできる可能性も出てきます。もし、ゆっくり観察していて代謝が正常化しないまま長期間過ごすと、その間に合併症が決定的になり、また膵臓の分泌能にも悪影響があるかも知れません。そのために薬の治療を必要とする、つまり食事療法で観察してばかりでは経過が良くないこともあります。



代表的な薬  


代表的な薬について簡単に説明します。 


@オイグルコンなど

薬品名(商品名)

オイグルコン、ダオニール、パミルコンなど

一般名(成分名)

グリベンクラミド

特徴、効果

1.25 ミリと2.5ミリの製剤がある。2.5ミリのものは形が小判型。 主として膵臓からインスリンを出させる作用を持ち、かなり強力に血糖値を下げる効果が期待できる。歴史のある薬。長所は長く強く効くこと。

問題点、注意点、

次第に効果がなくなること、膵臓を疲弊させやすいこと、低血糖を起こすと重症になりやすいこと、肥満を招きやすいことなど。2次無効(最初は効いていたのに、次第に効果がなくなることを意味する言葉)。

副作用

低血糖(稀なはずですが2.5%あると記載されています)、肝機能障害(0.7%)、発疹(0.1%)など。

あわせ飲み、相互作用

血圧の薬や解熱剤と併せ呑みになりますので、時々予測不能の効果の変化があります。この薬を使っている人は、風邪のときなどは細かく血糖値を測らないと危険です。手術などのためにインスリン治療に切り替える時に効果が変化することもよくあります。インスリンで血糖値を下げると、「糖毒性」が解消して、この薬の効果が急に高くなることがありますので、そのような時に以前と同じ量で飲むとひどい低血糖を起こし、手術後に事故を起こす危険性があります。

その他

1日3回飲むという処方をされている人を見かけますが、作用時間が長いことを考えると1日1〜2回が原則だと思います。


Aグリミクロン

薬品名(商品名)

グリミクロン

一般名(成分名)

グリグラジド

特徴、効果

20ミリと40ミリの製剤がある。およそオイグルコンを少し弱くしたものと言える。血液をサラサラにする効果もあるそうですが、実感できることはまずありません。

問題点、注意点

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

副作用

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

あわせ飲み、相互作用

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

その他

やはり1日1〜2回飲む薬です。



Bアマリール

薬剤名、商品名

アマリール

一般名(成分名)

グリメピリド

特徴、効果

1ミリと3ミリの製剤がある。およその機能はグリベンクラミドやグリクラジドと同じ。膵臓からインスリンを出させる以外に、インスリンの効果を高めるような作用も併せ持つために、少し膵臓にかける負担が軽いだろうと言われています。ただし、この効果を患者さん御自身は実感できません。

問題点、注意点

今のところ特殊な副作用は少なく、長所、短所もおよそオイグルコン、ダオニールと同じです。

副作用

低血糖(経験ありませんが、4〜5%ありうるそうです)、γ―GTP上昇(1.86%)、LDH上昇(1.82%)、ALT上昇(1.79%)、AST上昇(1.16%)、ALP上昇(1.06%)、BUN上昇(0.85%)、カリウム上昇(0.78%)、嘔気(0.73%)、白血球減少(0.65%)、下痢(0.63%)、胃不快感(0.63%)

あわせ飲み、相互作用

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

その他

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。



Cグリニド

薬品名(商品名)

ファスティック、スターシス、グルファスト

一般名(成分名)

ファスティック、スターシス(ナテグリニド)、グルファスト(ミチグリニド)

特徴、効果

短時間作用してインスリンを膵臓から分泌させ、食後の血糖値を下げる効果があります。この中では、グルファストが最も効果があるようです。効果が早いことが利点です。もしかすると、食後のインスリン分泌を促すことで、食後の過血糖がもたらす血管障害を予防する効果が非常にあるのかも知れません。

問題点、注意点

比較的新しい薬なので、数十年飲んだときに古い薬と歴然たる差があるのかまでは分からない。効力が少し弱めで、例えばオイグルコンを使っても充分なコントロールが得られない人の場合は、これらの薬ではコントロールを期待しにくい。値段が高い。

副作用

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

あわせ飲み、相互作用

上の表のグリベンクラミドと同じと思われます。

その他

軽症の患者さんには良い薬。血糖コントロール良好なら続行、空腹時血糖値などに悪化の兆しがあったら従来の薬に戻すかインスリンを導入するという方針で、限定的に使うべきと考えています。


Dα−グルコシダーゼ阻害薬

薬品名(商品名)

ベイスン、グルコバイ、セイブル

一般名(成分名)

ベイスン(ボグリボース)、グルコバイ(アカルボース)、セイブル(ミグリトール)

特徴、効果

グルコシダーゼ阻害剤、ブドウ糖吸収抑制剤などと呼ばれます。これらは腸管から糖分が吸収されるのを阻害して、血糖値の上昇を抑える薬です。いずれも単独では低血糖がほとんど来ないことが良い点ですし、インスリンや他の飲み薬と併用すると効果を補ってくれます。

問題点、注意点

まれに肝機能障害を起こすことがある。の中で糖分が発酵して、おならや下痢、腹痛の副作用が、かなりの率で発生すること、値段が高いこと。おなかの副作用はしばらくすると取れることも多い。始めはよく効いて、しばらくすると効果がなくなる人もいます。また、これらの薬は一種の糖分ですので、長期間飲み続けた後で代謝に作用があるかもしれません。

副作用

ベイスンの0.3ミリや、グルコバイの100ミリを最初から3回飲むと副作用が出やすいので、それぞれ0.2ミリと50ミリに減らすか、飲む回数を1回からにしたほうが安全です。

相互作用

他の糖尿病薬(併用は可能です)

その他

食事の直前に飲んでもらいます。製剤の種類はたくさんあって、口の中で早く溶ける製品も発売されています。

Eチアゾリジン系

薬品名(商品名)

アクトス

一般名(成分名)

ピオグリタゾン

特徴、効果

インスリンの効果を高めてくれる薬。太った方や、他の薬で効果が出ない方に使うと有効なことがある。おそらく糖尿病が悪化していくのを抑えるような効果があり、他の薬よりは膵臓に優しいと言えるだろうと思います

問題点、注意点

むくみの副作用が出る人が結構おられます。心臓の機能に問題がある人(慢性の心不全)、もともと腎臓病などのために浮腫みがある人には向きません。値段が高い薬です。

副作用

類似薬で肝臓をひどく悪くする副作用が出ましたので、この薬も時々肝臓に関する採血をしておくべきです。

あわせ飲み、相互作用

他の糖尿病薬(併用は可能です)

その他

最初は15ミリ製剤を使って試す方法が良いと思います。効果が全く出ない人も結構いて、有効無効がきれいに分かれるのは不思議です。



Eビグアナイド系

薬品名(商品名)

メルビン、メデット、グリコラン

一般名(成分名)

メトフォルミン

特徴、効果

インスリンの効果を高めてくれる薬。力としては弱い薬で、単独ではほとんど低血糖を起こしません。糖尿病の予備軍の方が糖尿病になるのを相当予防できる。他の薬と併用することで、効果を補うことも期待できる。HbA1cが1〜2%下がることもよくあります。

問題点、注意点

乳酸アシドーシスという代謝異常が発生する危険性がある。ただし、この乳酸アシドーシスの発生率は不明です。ほとんど発生していないからです。

副作用

非常に稀に乳酸アシドーシスという代謝失調を起こす可能性がある。手術の前、腎臓が悪くなったりして、体が酸性に傾きやすい時は中止が必要。乳酸アシドーシスの既往がある人、腎機能障害、肝機能障害のある人、低酸素血症を生じやすい人、アルコール摂取をする人、脱水症の人、下痢、嘔吐などの胃腸障害の人、高齢者、重症の感染症、外傷や手術前後、飢餓状態、脳下垂体機能不全、副腎機能不全の人、妊婦、この薬に過敏症がある人などには使用禁止

あわせ飲み、相互作用

アシドーシス(血液を酸性にすること)の危険を高めるものは全て併用注意です。消炎鎮痛剤(痛み止め)、ヨード造影剤(CTの時に点滴される薬)、ゲンタマイシンなど腎毒性の強い物質

その他

たくさん飲まないと効果が出にくい。

一般的な薬の使い方


糖尿病の薬は原則として少量から開始します。 例えば、オイグルコン(2.5)4〜5錠は保険が認める最大量ですが、いかに血糖値が高くても、最初からこの量で使うのは危険です。通常は少量から開始して、低血糖の有無、副作用の有無を確認しながら調節していきます。
ただし、これは外来で処方する場合を想定しています。入院中は頻回に血糖を測定して管理できるので必ずしも原則にこだわる必要はありません。薬の量や種類に応じて危険度を想定できれば、最初からある程度の量を使うことも不可能ではありません。
ですが、薬の効果が安定するのに時間がかかりますので、入院中にコントロールが良かった量で、退院直後に低血糖を起こす可能性はあります。管理できるかどうかが重要です。



ベイスン、ボグリボース、グルコバイなどの薬剤は、いきなり1日3回から開始すると腹の症状が出ます。1日1回、もしくは適当に飲んだり飲まなかったりしながら、徐々に慣らしていく必要があります。徐々にと言っても、あまり漫然と血糖がコントロールされないまま観察するのは良くありません。コントロールの見込みが立たなければ、インスリンへの切り替えを考えるべきです。 


薬の治療を始めても食事や運動療法が適切にされていないと、薬の効果が不安定になりやすい傾向があり、薬ばかりに頼るのは間違いです。