冬場に薪ストーブを使われている御家庭があります。灯油を使うより環境に良い気がしますが、微妙に健康を害する作用があるようです。話題になっている微粒子(PM2.5など)のせいかもしれません。   
タスマニア島での研究報告によれば、薪を使わないようにすることで心臓病が減るそうです。詳しい理由は判りませんので使っているストーブを急いで壊す必要はありませんが、気をつけたほうが良いと思います。  


[カルシウムサプリメントと心臓病]    

骨粗鬆症の予防目的でカルシウムを補う方がおられます。日本人は一般にカルシウムの摂取量が少ない傾向があり、栄養指導の現場では補うことは良いことという風潮があります。でも実際に補った場合の害や効果を検証する必要はあります。不足しているから補充すれば良いとは限りません。意外なことに、多量にカルシウムサプリメントを摂取すると、心臓病などが増えて死亡率が上がるという報告もあります(BMJ2013;346:f228)。     

この研究の対象者はスウェーデン人で、日本人とは食事の条件が違うと思われます。つまり、もともと多量のカルシウムを摂取している人達が、さらに薬で摂取した場合を研究したのでは、日本人とは違った結果が出ても不思議ではありません。日本人に限ればカルシウムサプリメントを飲んだほうが良い可能性もあります。残念ながら確認した研究がないので、誰にも解らないのです。また、この現象の理由は全く不明ですから、あわててサプリメントを捨てる必要もないはずです。  

カルシウムは筋肉運動の際に細胞の内外で流入、流出します。血管壁の収縮、心臓の運動も筋肉運動ですので、カルシウム摂取量による何かの血管の変化があるのかも知れません。 筋肉に限らず、細胞の活動の際にカルシウムイオンが細胞膜を行き来しますから、濃度によっては細胞の活動全体に影響がありえます。 内分泌細胞、神経細胞の活動の変化によって心臓病が増えるかもしれません。 動脈硬化が進んだ血管の壁には、石灰分が沈着しています。もしかすると、過剰なカルシウムが血管の壁に石灰分が沈着しやすい状況を作り、血管の固さを変えるような思わぬ影響もありえます。これらはいずれも想像にすぎませんが、予想もつかない害はありえますので、過剰摂取は控えたほうがいいと思います。    

常識的には、薬ではなく食事でカルシウムを補うほうが自然、かつ安全ではないかと思います。ただし、その際の乳製品も実は問題で、吸収の良さから従来よく推奨されてきた乳製品は、人の免疫系や代謝系に変化をもたらす可能性もあります。魚と乳製品との明確な違いを調べた統計はないと思いますが、従来の日本食の伝統に近いほうが安全で、小魚や野菜を中心に考えるべきと思います。     



診療所便り 平成25年5月分より (2013.05.31up)