既に新米が出回り始めていますが、新聞によれば地域によっては米が品薄だそうです。津波の被害と、原発事故の影響への思惑によるものでしょう。放射性物質が入っている米と言われたら、たとえ少量であっても敬遠したくなります。報道されるかぎりは今のところ問題ないそうですが・・・  

放射性物質について、専門家が激しい口調で問題提起したり、逆に静かな口調で冷静な対応を呼びかけたりしていますが、震災以降の報道を見ていると、自称他称を問わず、
専門家に対して不信感を持ちます。誰を信用すればよいのか判らないのは情けないことです。



 カルシウムサプリメント 

日本人は土壌や食生活の特性から、カルシウムの摂取が不足気味と言われています。子供の成長や骨粗鬆症の予防のために、牛乳や小魚の摂取を勧めるのが一般常識ですし、サプリメント(栄養〜健康補助食品)も販売されています。

でもサプリメントの効果、意義については曖昧な点があります。寿命を延ばすのか、骨折を減らすのか、害がないか等の点がはっきりしていません。骨が丈夫になっても、もし寿命が縮まるようなことがあれば、当然ながら意味がありません。

カルシウムの過剰摂取は他のミネラルの吸収阻害を起こし、また尿管結石の原因にもなるとも言われています。ただし、これは統計でやっと解るくらいの微妙な所見ですから、日常生活で害を実感できる可能性は低く、心配しすぎる必要はないと思います。 大量のサプリメントを飲む人や、結石が頻発する人だけは注意すべきかも知れません。

意外なデータとしては、カルシウム補充によって心筋梗塞が増える(BMJ2010;341:c3691)、骨折は減らない(BMJ2011;342:d1473)などの報告もありますので、少なくとも高いサプリメントを購入してカルシウムを補うのは勧められないと個人的には思います。 お食事で補うのが原則ですし、それにも限度があると思います。 

カルシウムの代謝には時に大きな個人差があり、カルシウムやビタミンDの補充が必要な人、補充すると危ない人の正反対の例があります。仮に私自身がカルシウム過剰な状態になって自分で気がつくか考えると、おそらく認識することはできないと思います。病院では患者さんが便秘や腹痛、食欲不振の場合にはカルシウム濃度を確認することが望まれますが、普通はこんな症状の時は食あたりだろうくらいに考えて、カルシウムの問題にまで気が回らないでしょう。サプリメントを飲む人は過剰摂取を避けるために、本当は血液中、尿中のカルシウム濃度も確認すべきかも知れません。  

商品の安全性や実際の効果に関してのデータが少ないので、明確なことは言えません。誰も言えないはずなのに、テレビで夜昼関係なく宣伝していますが、人の健康に関係する宣伝は内容、方法とも慎重にすべきではないでしょうか?    



診療所便り平成23年9月分より(2011.09.30up)