睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸は、肥満者に多い病気(状態)です。肥満やあごの形などが原因で、主に寝ている時間帯に喉が詰まって呼吸を止めてしまう状態です。
列車の運転手が居眠り事故を起こして話題になりましたが、睡眠が浅くなることの他に、低酸素状態になって内臓に負担がかかることが問題です。重症の人は、これによって血圧が上がったり、心不全を起こして寿命が短くなると思われます。病気の言い方はいくつかあるようで、睡眠時という言葉を除いたり、頭に閉塞型をつけて分類することも多いようです。
なぜ無呼吸が血圧に影響するのか詳しくは解りませんが、無呼吸の間は酸素不足に陥るので心臓に負担がかかること、睡眠が浅くなって興奮したような状態が続くことで影響するのかな?などと想像しています。肥満に伴って高血圧になっている人が多いので、血圧が下がっても肥満の影響か無呼吸の影響か判別しにくいために明確な説明は難しいと思います。
鼻に空気を押し込むマスクを付ける治療法があります。CPAPなどと言います。喉が何らかの理由でつまって呼吸が止まった時に、機械が感知して補助的に空気を送り込む仕組みです。
CPAPとは人工呼吸器の用語で、持続的に気道内を陽圧にして肺が虚脱するのを防ごうという方式のことです。鼻に当てる補助呼吸用マスクと本来の意味は違いますが、慣例になってCPAPと言えばマスクを意味することが多くなっています。
マウスピースをはめる治療や、耳鼻科で喉の手術を受ける方法もあります。それぞれに長所と欠点があるようです。
治療すると内臓への負担は相当軽くなるようで、私の診た患者さんでも熟睡できる、血圧が下がる、心不全発作がなくなるなどの効果がありました。論文を読んでも、無治療の時には狭心症などの発症率が非常に高いと書かれており、ある集団を調べたところ10年間で15%にのぼる発症があったのが、CPAP治療をすることで数%までに減らすことができたそうです。ただし、寿命が劇的に延びたといった報告は今のところないと思います。
患者さんの全員がマスクを付けるべきとは思いません。基本は食事療法で体重を減らし、のどがつまらないようにすることです。マスク治療は、肥満が解消できない間の一時しのぎと言って良いと思います。残念ながら減量が難しい人も多いので、結果として着けっぱなしになるのが現実ですが・・・。
マスクをするとオデコやアゴに当たって皮膚炎を起こされたり、感触が気になってかえって眠れないという方もおられますし、シューシュー風の音がするので、家族の人が不眠になるという思わぬ害もありえます。マスクの当たる部分は、今はいろんな形のマスクが開発されていますので、調整してもらうことはできると思いますが、風の音などは慣れるしかないかも知れません。
無呼吸の検査は、簡単な方法の場合は自宅でできます。機械の会社がサービスで訪問してくれますので、イビキが強い人、昼間の眠気が強い人、高度の肥満がある方などは一度検査してみられたほうがいいかも知れません。
診療所便りより 平成22年6月30日