慢性閉塞性肺疾患 


COPD
 
慢性閉塞性肺疾患はCOPDと略される病気で、肺気腫や慢性気管支炎、気管支喘息などの病気と共通し、肺の機能障害を起こす病気です。
病気の本態は、気管支が細くなること、肺の組織である肺胞の変性、破壊にあるようですが、他の病気と完全に区別できない場合も少なくないように思います。 
経過を知らない患者さんが来られて、この方は喘息か肺気腫か診断しなさいと言われても簡単にはできません。呼吸の音、症状に差はありません。肺気腫の方が喘息らしき発作を起こされることもよくあります。 


細かい違いにこだわるよりも、予防法や対処方法が同じ病態をまとめたほうが便利なことが多いので、このような言い方をすることが増えています。通常、病気の診断は明確にしたほうが良いのですが、この種の病気の場合は治療法や予防を重視し、無駄な検査や患者さんの経済的な負担を減らしていこうという流れにあります。
「診断がつかないうちは治療しない。」
「検査は患者の利益のためなので、どれだけやっても良い。」
という気風のようなものが以前はありましたが、このような方針が結果的に患者さんの利益を損なうなら考え直す必要があります。  
COPDと略されると難しい病気のような気がするかもしれませんが、珍しい病気ではありません。患者さんは多数おられますし、今も増加傾向にあります。昔はタバコを吸う方が多かったことや、高齢化の影響、大気汚染などの影響もあるかもしれません。  


診断 
確実な診断は難しいのですが、CT写真や肺活量の検査などで臨床的な診断=つまり、疑い濃厚で間違いないだろうという診断は可能です。CT写真では肺の色合いが変化したり、逆に細かい粒子状の影が写ったりしますと、肺の含気の量に不均一な部分がある、もしくは肺胞に何か炎症などがあると疑われます。 
肺活量検査では、息を吐く時の空気の流れが遅れたり、流れる量が少なくなったりする傾向があります。ただし、軽症の方でははっきりした所見が出なくても不思議ではありません。     
この病気は「閉塞」の文字が同じ閉塞性動脈硬化症と直接の関係はありませんが、予防が大事なのは同じです。病気が出来上がると治療が難しいからです。タバコが関係しているのも同じです。     


原因 
9割くらいはタバコが原因と言われています。タバコを吸う人の全員がCOPDになるわけではないのですが、かなりの割合で影響を受けて肺の機能が失われます。
タバコの煙を肺まで吸い込まないで、浅く吸って喉で止めれば大丈夫と言われる患者さんもおられますが、そのような工夫に意味があるのかは知りません。姑息なことをせず、禁煙が大事だと思います。 
タバコ以外の理由によって肺気腫になられる方も多数おられます。規則正しく生活されて特に生活上の問題が全くなくても、不幸なことに酸素不足に陥る場合もあります。喘息の発作を抑える「メプチン」という薬を多用し、発作の予防をされなかった患者さんの中にCOPDと思われる所見を見ることがあります。繰り返す発作は気管支を傷め、障害を残すからかも知れません。   


治療  
治療方法は、喘息と似ています。吸入薬を使って気管支を広げる治療をします。有効性を実感できる薬がなかなかありませんでしたが、「スピリーバ」という薬は楽になったと言われる方が多いようです。 
痰を切れやすくする薬や、アレルギーに関与する薬、一部の抗生物質などの追加が必要な場合もあります。ただし、正直言ってあまり効きません。血液中の酸素が不足した場合は、酸素吸入を御自宅でも続ける必要があります。 酸素のチューブをつけて生活するのは面倒ですし、息苦しさが軽くはなるものの全くなくなりはしないので、禁煙による予防が大事です。 


COPDの方は肺炎を起こしやすい傾向があり、また罹ると命に関わる場合があるので、インフルエンザワクチンなどの予防接種がお勧めです。部屋の温度、湿度の管理も重要です。
栄養状態
を良くしておくことも大事です。一般に肺の病気の患者さんは呼吸でかなりのエネルギーを消費するらしく、栄養状態を良くすることが望まれます。 肺炎に罹って乗り切れるかどうかという時に予後を決定するのは、栄養が充分に摂れるかどうかという印象もあります。  




診療所便り 平成22年11月分より 





閉塞感を感じる・・