慢性腎臓病 

(定義)
以下のいずれかを満たす場合を慢性腎臓病とすると、学会が定めました。 
1 腎障害(腎臓の形か機能の異常)が3ヶ月以上続く
2 糸球体濾過率(GFR)60未満が3ヶ月以上続く。


この場合の障害の判断は、組織検査、血液、尿検査、レントゲンなどの画像いずれでも構わない。またGFRというのは、腎臓が体の老廃物を排出する能力を概算したものです。   


(尿蛋白の意味)  
人間ドックや健診では尿蛋白が出ているのに、「要観察」と判定される人がいます。昔の判定は、ほとんどがそうでした。でも、これは意味を解っていない判定だと思います。ドックを担当する医者のほとんどは透析を担当した経験がありませんので、悲惨さを認識できていません。そのため、勘違いをしていたのだと思います。 


透析の直前に血の泡を吹き出し、これからどうなるんだろうか?と不安な表情をされている患者さんや、「もう透析が効かなくなりました。」と説明した時の家族の表情などを知っていれば、なんとか腎臓病を予防したいものだと実感できます。 


尿蛋白は激しい運動の後には誰でも出ておかしくはないのですが、安静にしていても持続的に出ている場合は、何かの腎臓病が考えられます。また、尿蛋白は出ないけれど、徐々に腎機能が悪化する人もいます。現在は症状がなくても、将来は困ったこと(腎不全〜透析)が予想されるなら、悪化を予防しなければなりません。


そこで、そのような病状を表わす慢性腎臓病という考え方を作って、腎機能悪化の予防に注意してもらおうという運動が起こっているわけです。新たに作った病名です。


(腎不全の予防)  
腎機能が悪化した場合には、血液透析によって生命を維持せざるをえませんが、機械につながれるような状態ですので、見ていて非常に気の毒です。できれば予防したいものです。


腎臓を良くする薬は今のところありませんが、悪化を抑える薬はありますので、もし対象だと解れば早い段階で治療を開始すべきです。ボヤボヤしていると特に症状もないのに、「今から透析するしかありません。」と言われることもありえます。


糖尿病の患者さんの場合は、尿蛋白が出る前から対処しないと間に合いません。尿アルブミンなどの指標がありますので、年に1〜2回くらい検査して量が増えていかないか確認すると安心です。 


(血圧の薬) 
もしアルブミン尿が出るようになったら、腎臓病用の血圧の薬を処方することがあります。そうすることでアルブミン尿が減ることは証明されています。確実に透析への導入を減らせるかは不明ですが、導入までの期間を延ばすことはできます。


(塩分制限) 
塩分も常識を外れるほどの制限が望まれます。そうしないと腎臓に負担がかかってしまうからです。味付けは当然ながら薄味にすべきですが、例えば
@刺身にはワサビなどを大量に使い、醤油は使わない
A冷ややっこにはカツオ節などを山のように載せて、醤油は使わない
B漬け物は一生食べない
C食卓には塩も醤油もない
・・・これくらいの覚悟が必要です。


醤油がない食卓を勧めるなんて、この医者は常識がないバカ医者かと思われるかもしれませんが、オーバーな言い方ではありません。腎不全の予防のためには一日の塩分摂取量を6グラム以下に抑えることが望ましいと思われますが、一般的な食事の塩分は12グラム以上はありますから、ちょっと制限したくらいでは目標に到達するのは難しいと思います。





診療所便り 平成20年11月より