両腕の血圧の差
血圧を左右の腕で測ってみると、違う値が出ることがあります。もともと左右の腕の血管の走行は左右対称ではありませんが、血圧の値も大きく違う場合があります。 腕の血圧の左右差と病気の関係を調べた統計が発表されました(BMJ2012;344:e1327doi:10.1136)。
統計の結果、左右でわずか10ほど値が違うだけでも、心臓血管病の発生率や生存率は明らかに違うようです。でも10くらい差がある人は少なくありません。 上肢と下肢で大きく差がる方も珍しくありません。 それが良いことでないとは解ってはいましたが、極端に差がない場合は、血管を写す検査まではやり過ぎだと思っていました。 今後は認識を改める必要があるかも知れません。
ただし、左右の血圧を薬や血管内治療で差がないように合わせるべきかというと、そんな手段は危険ですし、意味も解りません。あくまで左右差は動脈硬化や炎症による血管の狭窄の結果で生じると思われます。 左右差を理由に急いで治療法を変える必要はありませんが、脳卒中や心筋梗塞などの危険性を自覚する必要はあります。腕の血管に細い部分があるのなら、他の血管にも当然細い部分はあるのだろうと考えるべきです。
血圧の左右差は急に出現するものでは通常ありませんので、毎月左右の血圧を測る必要はないと思いますが、左右差がある場合は脳や心臓の血管の評価をすること、生活の仕方をもう一度考えてみること、さらに非常に大きい差があれば、MRA(MRIを使った血管の写真)などの検査で細い部分を実際に写してみることなどが望まれます。
当院では、今後年に1〜2回程度、血圧を左右の腕で測定していこうと考えています。
診療所便り 平成24年7月分より(2012.07.31up)