コロナワクチン接種費用への補助は、3月まででいったん終了の予定です。接種券を使わないままお持ちで、今までの接種で副作用がなかった方は、申し込まれたほうが良いと思います。ただし、過去にひどい副作用が出た方までが無理に接種する必要はないはずです。 
コロナウイルスが急にこの世から消えるとは考えにくいので、免疫力の落ちた方が今後も感染し、時々流行が繰り返されるはずです。今はウイルスが弱毒化した印象を受けますが、感染者の中には症状が激しい方もおられます。 
ワクチンは万能ではありませんが、接種でウイルスへの免疫を維持しておくと、罹った時の重症度が下がります。 
      


 アルツハイマー病の血液診断  

アルツハイマー病の診断は、症状と脳のMRIPET検査、脳脊髄液の検査などを組み合わせてされています。でも徐々に、血液検査での診断も可能になりつつあり、成果が医学雑誌でときどき発表されています。国内、海外で様々な試験が行われ、最近も発表がありました(JAMA Neurol. doi:10.1001/jamaneurol.2023.5319)。 

測定されたのは、「p-tau217」と略されるマーカーです。血液中のp-tau217は、既知のマーカーである脳脊髄液中のアミロイドやタウ蛋白と良く相関していました。 脳脊髄液を採取する必要がなくなれば、一般健診でも経過をみながら検査できますので、症状がないうちから診断し、発病を予見できる可能性もありそうです。 

P-tau217は候補のひとつで、他にもマーカーの候補はたくさんあり、まだ決定版の物質ではないようです。認知症の発症とp-tau217単独の値との直接の関係を証明できた大規模研究もないようです。でも血液中のアミロイドβ蛋白や、他のp-tau蛋白、画像診断などと組み合わせて指標を選べたら、診断精度は上がるでしょう。既にそういった組み合わせも種々検討されています。 

脊髄液の検査は侵襲も大きいですし、放射性物質を使用するPET検査は高価なので、なるべく避けるべきと思います。     

p-tau217測定キットは、研究のレベルでは商業的に売られていて、国内で測定して研究している施設もあります。 まだ健康保険を使って臨床の場で普通に検査できる状況ではないものの、もし早期診断が可能になれば、病状が進行する前に準備し、将来のトラブルを予防することもできるので、意義はあると思います。

いっぽうで、自覚症状がないのに、「あなたはアルツハイマー病です。」と言われたとすると、精神的にどうなのか、仕事や生活の面で不利益を被ったりしないのかは気になる問題です。
              


 科学論文への生成AIの関与 

優れた生成AIGenerative Artificial Intelligence)が開発され、既に役所の業務などに利用されているそうです。ただしAIには欠点もありそうです。学術雑誌がAIへの規制を設けているか、調査されました(BMJ2024;384:e077192)。    

全く認めていない雑誌は少なく、調査された雑誌のうち、ただ一つだけだったそうです。部分的に認めている雑誌がほとんどということになりますが、どの程度まで認めるかは各雑誌で対応がバラバラなので、読者が規制の程度まで把握して読むのは難しいと思います。  既に掲載された論文は多数あると考えられます。気づかないまま、AIの文章を読んでいるのかも知れません。    

生成AI
の大きな問題点は、嘘の内容でも表示してしまうことです。立派な体裁をとった文章を読むと、嘘の内容であっても説得力に負けて信じてしまうでしょう。 

AIとは関係なく、ずっと以前から国内、国外とも、論文の訂正や取り下げはよくあります。捏造が明らかになったため、論文を撤回したり削除されて辞職を強いられたり、自殺した研究者もいます。収入や名声のために捏造しようという誘惑には、根深いものがあるはずです。    

中国には論文を作成する専門業者がいるそうです。なかには上手に虚偽の内容を掲載し、簡単には見抜けないような高度の処理をしているケースもあるといいます。そんな業者が生成AIを利用すると、もう誰もウソを見抜けないかも知れません。 
     



診療所便り 令和6年3月分より・・・(2024.02.29 up)  



 
          

 

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