8月に「南海トラフ地震臨時情報」が発令されました。結局、注意の段階のままで終わりましたが、なんとなく不気味な1週間でした。
実際の地震では熊本でも被害が出るでしょうが、怖れるばかりではしょうがなく、飲料水や保存食、充電の手配などを必ずやっておくべきです。
熊本地震はいきなりだったので準備不足でしたが、今後はもっと要領よく乗り越えたいと思います。
コロナワクチンの定期接種
65歳未満の健康な方には原則として補助がありませんので、1万円以上の負担金が必要になります。医療関係者、介護関係者は職務上、接種せざるを得ないでしょう。受験生やその家族の方達が接種する場合、金銭的な問題が大きくなります。
コロナは今後も流行するはずです。海外との交流が非常に盛んですから、新たな流入が続くと思います。ウイルスの毒性は軽くなりつつありますが、肺炎を起こす方が意外に多く、油断できません。ただ、ワクチンは高いし副作用も怖いので、接種するか悩む人も多いでしょう。
WHOは、日本と同じく高齢者、医療関係者、基礎疾患を有する方に接種を推奨しています。信頼度の高い英国、イスラエル、米国CDCの推奨内容は少し意見が分かれていますが、およそ日本と同じですので、日本の方針にも意味がありそうです。
でも、先行して接種した国の情報がないので、まだ実際の効果は分かりません。そのため接種の意義は曖昧と言わざるを得ません。ワクチンそのものに反対する人も多く、週刊誌などに堂々と意見を発表していて、読むと不安になります。人の生き死に関わることで週刊誌に意見を投稿して良いのか、医学雑誌や公的機関に対してすべきではないか、そもそも書き手の責任をどう考えているのか、疑問に思います。
理屈から考えて、接種して免疫を維持したほうが良いはずと思える程度の根拠しかないのが実情で、本当の意義は南半球のどこかなど、先行する国があれば確認できると思います。おそらく対象に当たる人で、過去の接種の際に副作用がなかった方は接種したほうが良いでしょう。
既にファイザー社は一人用のシリンジを製造していて、政府の承認も得ており、接種に使えると分かっています。
武田薬品が販売するヌバキソビット注は、ファイザー社やモデルナ社製のRNAワクチンと違い、旧来の理論に基づいて作られています。そのため比較的安全だろうと言えますが、それでも副作用ゼロではありません。添付文書によると、目立つ副作用としては注射部位の痛みが5~7割、頭痛が2~4割などです。旧来のワクチンで一般に見られていた程度にとどまっています。
この製品は2022年に販売承認されていますが、今年の接種料補助の対象薬に含まれるのかは、まだ決まっていません。ファイザー社の製品が優先的に扱われ、補助の対象外になるかも知れません。
薬の流通の混乱
薬の流通に関して混乱が続いています。注文しても入手できない、製造中止になる、ビタミン剤や胃薬の処方が認められないなどです。コロナ感染の患者さんに、解熱剤も咳止めもないため我慢してもらうことがあります。情けないことです。
要因は複数ありそうですが、①製薬会社の不正に対する政府の厳しい対応、②円安や資源価格の高騰の影響、③コロナの流行、④不適正な薬価設定、⑤製薬会社の経営方針の影響、⑥医療費抑制のための規制、⑦抗菌剤処方への指導などが考えられます。 担当官や製薬会社が悪意を持っているはずはありませんが、国民の利益を害する結果になっていることは否めません。
製造法や価格、処方の査定を厳しく管理することは、理念としては正しいと思います。不正な方法で作られた薬は危険なので、製造を中止させるべきです。でも、規制のやり方によって現場に混乱を起こし、その混乱によって必要な薬をもらえないとなると、本末転倒です。製造や流通のシステムを破壊することは避けないといけません。
当院の処方薬で「メコバラミン」と「アリナミンF」の処方は、すでに難しくなりつつあります。中止が可能なら、中止すべきです。 前立腺薬の「タムスロシン」、胃薬の「ドンペリドン」、抗生物質の「セフポドキシム」は入手不能です。製造中止や流通量不足のためのようです。 胃薬の処方に検査を求められる場合もあります。でも厳密にそうすると、患者さんの負担を増やすだけでしょうから、とてもできません。
国も製薬会社も懸命に仕事をされているはずですが、視点が狂っている印象です。 役人の方が業績を挙げる、政府への社会的批判を避けるとか、会社の利益を確保することも大事ですが、国民の利益を最優先し、安全な薬を確実に届けるという、安全保障的な考え方が必要ではないかと思います。
大きな災害や紛争が起これば、今よりもっと厳しい状況になります。今の様子だと、政府に適切な判断を期待するのは無理な気がしますし、製薬会社も対処できそうにありません。不安定要因はたくさんありますので、何が起こっても対処できる仕組み作りが必要と考えます。
たとえば製造過程に不正があった場合に、製薬業界内の生産調整で流通量を維持する仕組みや、緊急輸入によって対応するための法制度の整備、原材料価格の急激な高騰に薬価調整で迅速に対応すること等は、大きな予算なしでも可能ではないかと思います。
診療所便り 令和6年9月分より・・・(2024.08.31up)