気候が良くなり、コロナの感染者数もやや落ち着き、街中には人通りが戻って来たようです。
台湾や韓国、東南アジアからの観光客が増えたそうで、これに中国本土からのお客さんが加わって買い物をたくさんしてくれれば、冷え込んだ商店街の景気も良くなることでしょう。
ウイルスを持っていなくてマナーが良く、衛生観念がしっかりしていて、愛想も気前も良くて騒々しくない方達なら大歓迎です。  
  



 食の安全性に関して   


私がよく行くスーパーでは、アサリとウナギは中国産、豆腐はアメリカ産の大豆を使った製品が多く、国産の作物を原料とした商品は店を選ばないと買えません。年々海外からの品が増えつつあるように思います。 

調理して混ざった状態の食品は、海外産の材料が多いようです。「国内製造」と書かれていても、材料の原産国名が書かれていないなんて妙です。おそらく、表示の義務がないのでしょう。すべて表示して欲しいと思います。消費者保護という言葉を忘れたのでしょうか?

国内で販売が認められた製品は、どれも国が定めた安全基準を満たしているはずです。でも本当に安全なのか、基準が妥当なのか、よく管理されているのか、私達では調べようがありません。まさか国が国民のことを気にしないはずはないから・・・でも・・・一抹の不安を感じます。   

残留農薬や、遺伝子を操作された作物の長期的な害は心配です。普段から気にして文献をあさっている私でも調べられないので、よく分かっていないことが多いはずです。もしかすると、過剰に不安をあおられているだけかも知れません。ときどき雑誌で食品の安全性に関する告発記事を読むと、どれも怖ろしい内容です。

ルポライターの堤未果氏が、「食が壊れる」(文春新書)という本で記述していますが、巨大企業や有力投資家が政府や国連を支配し、国の食品安全基準をも変更させる仕組みがあるそうです。食品の遺伝子を操作していても、遺伝子組み換えではないと言い張って、表示していない可能性があるようですが、それではほとんど詐欺に近いと思います。 

また、東京大学教授の鈴木宣弘氏によると、日本の安全基準は、アメリカの要求により変えられてきた経緯があるそうです。国同士の交渉の結果、規定を緩めることに決まり、規定の変更に反対する役人は移動させられたという酷い話もあります。これも一種の詐欺、国民に対する裏切りに近いでしょう。  

産地を表示せず、国民から判断材料を奪っても良い・・・それは無茶な話です。 問題は、農薬や遺伝子操作の実際の害がどの程度なのかですが、研究はなされていても、製造会社が発表したデータが使われたりするため、信頼度は高くありません。医学雑誌でこの分野の研究を見ることはほとんどなく、ちゃんと審査された研究が少ないようです。医学者、農学者とも、はっきりしたデータを持って安全基準を定義できる人はいないと思います。  

あまりデータがないまま、商品は出回っている状態です。何かの害が明らかになっても誰も責任をとらないし、その時点で規定を改正すればよい・・・そんな考え方で良いのか疑問ですが、それが今の国の方針と言えます。責任を持てるような判断をして欲しいと思います。 

国産なら安全かというと、かえって外国より多くの農薬が使われている場合もあり、そうとも言い切れません。無農薬にこだわると、経営が成り立たないことが多いそうです。 ただし、何か食べないと生きて行けないので、私達としては財布と相談しながら、買える物を買って食べるしかありません。産地や原料に注意し、よく調べて商品を選び、せめて野菜は念入りに洗うなど、自分を守る考えでいたほうが良いと思います。 
            

 ダイエット法の評価   

巷では様々なダイエット法が宣伝されています。女性雑誌のコーナーには、派手な文字で、「今までのダイエット法は間違っていた」「一か月で10キロ!」などの文句が書かれた広告を見ます。

脂肪、炭水化物の制限を中心に、運動や精神面の調整を加えた方法があって、開発した研究者の名前がついた「〇×式ダイエット」といった言い方で、多くの健康法が流行してきた歴史があります。 炭水化物制限を勧めない日本の医者は間違っているという意見が流行した時期もありました。   

各種ダイエットの効果を調べた新しい報告が出ました(BMJ2023;380:e072003)。その結果、明らかに効果があるのは伝統的な「地中海型」と言われる食事でした。心筋梗塞や脳卒中、癌などを減らし、寿命を延ばしていました。 これに対して炭水化物や脂肪の制限は、寿命や病気の予防には役立っていないようです。 

炭水化物と脂肪はカロリーの元になりますので、痩せようと思ったら制限すべきと考えるのが普通です。「太り過ぎは良くない」→「痩せるべき」→「カロリー制限は必要」→「炭水化物や脂肪を制限」・・・それが自然な思考の流れです。問題は、それによって実際の効果があるかどうかですが、今回の統計を含め、過去のデータでも効果ははっきりしていません。かえって寿命を短くするかもしれないという報告さえあります。健康に良さそうな気がしても、イメージだけのようです。   

地中海食はオリーブ油、ナッツ、果物、豆、魚、鶏肉、チーズやヨーグルトが中心で、多価不飽和脂肪酸が多く含まれる関係で心血管病を抑制すると、以前から言われています。新しいダイエット法に、それを上まわる効果があるかが問題ですが、それは今のところはないと考えられます。

地中海食ではパスタやパンを食べないわけではありませんから、炭水化物の摂取量は少なくないはずです。日本食と比べると油っぽく、カロリーが高めと思いますし、イタリアン料理や宅配ピザなどを食べると喉が渇きますので、塩分も少なくない印象です。赤ワインまで飲んだら、すごく太ってしまいます。それでも、炭水化物制限食より効果が高いとは、ちょっと驚きです。 

和食と比べるとどうなのか、その問題がなかなか解明されていないのが残念です。両者を直接比較した大規模研究は、今のところないようです。おそらく、伝統的な和食は健康食であり、寿命を延ばしているはずですが、直接の比較研究がないので、たぶんそうだろうとしか言えません。   

少なくとも今言えることは、炭水化物制限、動物性脂肪の制限で寿命が延びる可能性は低いので、極端な制限に走らないほうが良いということです。 




診療所便り 令和5年5月分より・・・(2023.04.30 up)  




 
          

 

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