健康保険証は来年の秋まで使えます。その後はマイナンバーカード、もしくは「資格確認書」に移行することが決まっているそうです。受付の仕方が変わるので、困惑される方も多いと思います。
そもそも、保険証にそれほど問題があるのでしょうか?私には分かりません。国は必要性の低い事に力を入れている気がします。
マイナンバー関連で既に数兆円の予算を使っているそうですが、私が心配症だからなのか、財政が心配です。    



 サイバーセキュリティ対策  

(当院の作業)マイナンバーカードの読み取り機を導入し、動作を確認中です。当院でできるのは、保険証が有効かどうかを確認するだけです。収入などの情報を閲覧することはできません。本人の確認があるので、私達が興味本位に誰かの個人情報を閲覧することも困難です。 

(外部からの侵入)仮に外部の侵入者が機械を操作しても、そのまま個人情報を閲覧することはできません。複数のパスワードの入力が必要ですし、一般的なインターネットとは異なる回線を使用するため、一定の安全性はあります。機器を盗みだして外で操作するとしても、やはり同様と思います。

(サーバへの攻撃)カード読み取り機を介さずに政府や社会保険事務所、税務署などのサーバにネットから侵入することは可能で、そちらのほうは現実味があります。それに対して私達でできる対策はありません。  

(カードの紛失、盗難)マイナンバーカードは小さいので、紛失は起こりえます。犯罪者が強引に迫ってきたら、奪われるでしょう。
それによって本人になりすましての物品購入、資産の剥奪、資格申請など、可能性として利用法はいろいろ考えられます。すばやくカードを無効にできれば被害を防げるはずですが、犯罪者たちも準備しているはずですので、実際の対応が上手くできるかは分かりません。
特に今後、カード情報がスマホに入れられるようになると、さらに情報管理は難しくなると思います。     

(カルテの管理)当院のカルテは、安全性を優先して、ネットにつないでおりません。外部につなぐと、機器やソフトの脆弱な部分を通じて情報が洩れたり、データを人質に取られたりする可能性が生じます。物理的に遮断するのが対策の基本です。 
今までの犯罪者は、大量の情報を一括して保管している所を狙っているようです。当院の場合は一括して全てを盗めないように、分散した状態にしています。日常の便利さより安全性、管理責任を優先しています。 

(情報漏れの状況)ただし、当院が頑張っても、他の病院や事務処理機構などから、既に何度も情報は洩れています。
年金機構の情報が回線を通じて外部に洩れたり、そもそもデータ入力を海外の企業に依頼したり、考えられない杜撰な例がありました。官庁や事務局がデータを守ってくれるとは考えないほうが良いでしょう。 

(電子処方箋)現在、国は電子カルテを外部とつなぐように推奨しています。電子処方箋をさかんに宣伝し、処方箋を紙ではなく、電子的な通信に移行させる流れになっています。
確かに日本は情報管理の分野で遅れており、改善は望まれます。どこの医療機関でも処方箋を閲覧できると便利ではあります。でも、その必要が生じるケースは実際のところ稀で、お薬手帳や薬の実物を持っていれば不都合はありません。
施策の順序を間違っているのではないかと思います。電子処方箋は、他のもっと大事な分野への投資が済んでから考えればよいはずです。  

(責任の所在) 情報漏れの危険性がなくなることは、今後もなさそうです。国が責任を取れるなら事業を進める資格がありますが、責任の取り方に関しては説明書に何も書いてありません。そのような姿勢には疑問を感じます。
国の姿勢のせいで国民の不安感が残り、普及が進まないため優遇策を要し、余計な予算を費やしている面があります。   
マイナンバー制度のために国が使った数兆円は、使い捨てできる金ではありません。兆単位の予算を使う事業に、責任は生じると思います。
     


 コロナ対策の予算  

予算の策定は、一般人の感覚では理解できないことだらけです。気を失いそうなほど巨額の金が動き、私達がその内容を吟味することはまず無理です。
素人考えですが、欲しい金額を積算していったら、役所や与党内部の力関係で恣意的な配分がなされるはずです。省益、政治家の人気取り、役人の天下り先への配慮などが影響しないようにするのは難しいでしょう。   
極端な話、家計が苦しい時に小遣いを減らされるのと同じように、予算を節約できない省庁は職員給与を削減、与党議員には税金をかける・・・破産しないためには、そのようなルールも必要ではないかと思います。  

(予算額)コロナ対策費として、日本では104兆円の予算が組まれましたが、この額は東日本大震災関連予算の数倍だそうで、おそらく最初からコロナにかこつけた金額も含まれてはいるはずです。額が大きくても垂れ流しにならずに有効利用され、雇用と税収が維持され、国民の収入が安定し、財政も悪化しないなら、適正だったと言えます。ただし、その判定は難しいものになると思います。


(当院への支援)今日まで様々な事業所が運営を維持できたのは、予算に組まれた支援策に負うところが大きいはずです。 一時期は小児科や耳鼻科などの患者数が急に減り、飲食店も営業の自粛で酷い状況だったはずです。 当院は県から補助金を受け、防護服なども援助されて助かりました。ただ、もらっていて恐縮ですが、発表される支援策は、さすがに大盤振る舞いが過ぎないか気になりました。

(コロナ利権の深層)コロナ対策の予算を検証した本(コロナ利権の深層・宝島社)を読みました。この本は、予算の無駄遣いを追求した内容でしたが、有効性の評価や海外との比較が不足しており、少し検討不足の印象を受けます。業界ごとの実質賃金の変化、税収への影響、貯蓄に回った金額など、検討すべき点は今後の調査を待たないといけません。   

この本には怪しい収益を上げた病院もあると書かれています。コロナの流行時に、入院患者を受け入れずに補助金を得た例もあったようです。ただし病院としては、ベッドを空けて備える必要や、職員の感染で対応できなかったなどの理由があったかも知れませんので、一概に不正受給とも言い切れません。
    

飲食・観光業界への支援内容を見ると、非常に不公平で、しかもバラマキに近い印象を受けました。布マスクの支給、ワクチン接種の仕組みなどにも首をひねりたくなる点が多く、非効率性とともに、あわてていた印象を受けます。財政規律のモラルも破綻していたようです。
政府の発表を見た印象では、そもそも危機や混乱を想定する能力、事前に準備する姿勢に欠けていて、準備しようという意見が採用されにくい体制になっていたのではないかと感じました。  
  

役人や業者の思惑に左右された事例もあるようです。手続きのために電通などの会社に億単位の金が流れるという不思議な現象も起こりました。
ドサクサに紛れて予算を取ること、正しいかどうかより急いで金を使うことに熱中し過ぎたのかと想像します。不正な利益誘導があったのかも知れません。 
ただし、確かに支援は急を要しましたので、政府の仕事内容を全て否定することはできません。  


SARS対策)2003年にSARSが発生した時、どのような対策がとられるか注目しましたが、とうとう大きな発表がありませんでした。学会や医師会からも、提言のようなものは出されなかったはずです。日本に感染が波及しなかったからでしょう。あの時、PCR検査機器の整備、ワクチンの準備、予算投与のシミュレーションなどをやっていたら、対処はずいぶん違っていたと思います。    

2003年の時点で対策をとっていれば、もしかすると今回の予算の数割は節約できたかも知れません。感染者数が同じとしても、対策をとって来たことに納得できて、政府への信頼度も違っていたはずです。
2019年以降は、準備を怠ったツケが出たように感じます。無策のままパンデミックを迎えた印象を受けました。戦いが始まってから作戦を練ったようなものです。  


(検証と備え)今後またパンデミックが起こった時のために、予算内容の検証は必要です。そうしないと、次も見当外れのことをやってしまうはずです。 
検証というと粗探しのようなイメージを持つ人が多いようで、うやむやのままが好まれます。でも、兆単位の金が動いた場合は、人情に足を引っ張られることなく、検証が必要と考えます。次の危機に備えるためです。    

次のパンデミックへの対策を研究し、もっと適格で素早い対応をとれるようにすべきで、そのための予算こそ必要と思います。     



診療所便り 令和5年3月分より・・・(2023.02.28 up)  




 
          

 

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