コロナの感染者数が再び増加し、横ばいに近い数で推移しています。なんとなく、対策を諦めたかのような世間の雰囲気を感じます。
「我慢しても流行が治まらないなら、自由に行動していいじゃないか」、口に出さないまでも、そんな感じです。どの程度まで行動制限を続けるべきかの判断は、とても難しくなっています。   
私の意見としては、入院ベッドが不足しないなら、おそらく救命率は一定程度確保できますので、社会生活も維持できます。感染を完璧にコントロールするのは難しそうですので、死者数が増える大流行が来ないように、常識的な感染対策を今後も続けるべきと思います。
海外ではマスクを外す国が増えているようですが、しばらくはマスク着用を推奨すべきではないでしょうか? 
 


  脳梗塞の血管内治療   

脳梗塞の発症直後に、血栓を除去する治療法があります。うまく行けば症状が軽くて済むのですが、病巣の大きい重症の脳梗塞における有効性がよく分かっていません。

日本人を対象に、効果を試した結果が発表されました(
N Engl J Med 2022; 386:1303-1313)。神経学的所見の改善に関し、通常の血栓溶解療法の有効率が8.8%なのに対し、血管内治療では31%ありました。血流を回復することで、症状が軽減したと考えられます。

ただし、治療を受けた中で6割近い方に脳出血が起こっており、血管をいじる関係で、副作用も多いようです。   

脳梗塞は寝たきりや麻痺などの後遺症の原因になりますが、それ単独で死亡することは少ない病気です。梗塞の範囲が限られる脳血栓での死亡率は、ほぼゼロと言って良いくらいです。 

主幹動脈に塞栓を起こした場合、管理は簡単ではないものの、病院内での死亡率は1割程度です。亡くなる方のほとんどは、輸液のしすぎや併発する心不全や肺炎が死因になります。

もし脳出血を起こすと、出血の場所や程度によっては急速に呼吸抑制を生じて状態が悪化します。脳出血が来ないように、そして他の合併症も起こさないように、うまく対象を選び、成績を上げないといけません。  

海外でも同じような試験が行われ、4割以上の方が亡くなっていたようです(
https://doi.org/10.1038/s41598-021-89638-x nature)。医療環境や人種の違いによるのかも知れませんが、4割は怖ろしく高い数値です。麻痺が軽くなるかも知れないとしても、死亡率を下げることができないなら、治療の意義に疑問を感じざるを得ません。

大きな脳梗塞は寝たきり患者を生むので、後遺症を減らす工夫はたしかに大事です。でも生命予後を悪化させないことを前提にして、その上で麻痺の軽減を狙う姿勢が必要ではないかと思います。

日本からの報告は、死亡率を公表していないものが多く、実態がよく分かりません。もっと明確に提示し、報告の最初に載せて欲しいものです。何も隠蔽しない姿勢を明示し、死亡率の問題を軽視せず、モラル面の問題がないことを証明しておいたほうが良いはずです。



 コロナワクチン4回目接種の効果   

コロナワクチン接種で先行しているイスラエルから、4回目接種の報告が出ています(DOI:10.1056/NEJMc2202542)。  

3回目の接種後、抗体の量は減ってしまいますが、4回目を接種すると再び増加し、3回目接種時と同じ程度まで上昇することが確認されました。そして抗体の量は、少なくとも数週間は維持されるようです。  

オミクロン株に感染する率は、一カ月間の観察期間中では未接種の方が25%、接種後の方が18~20%でした。接種すれば感染率は数割減るものの、結構な確率で感染することになります。

感染率が異様に高いので、日本とは違った環境下での統計ではないかと思いますが、少なくともワクチンに劇的な感染予防効果を期待するのは、かなり難しそうな印象を持ちます。

抗体が全くない状態で生活するのが怖いなら、4回目も接種すべきでしょう。でも接種して安心できるとも言えない。しかも、接種後には発熱、倦怠感が起こることを覚悟しないといけない。そう考えると、4回目の接種を人にどの程度勧めるべきか、私にもよく分かりません。

接種の対象者として高齢者を中心に考えるべきではないかと思うものの、それにすら異論が多いかも知れません。若い方を放っておくと、結局は若い方から高齢者に感染させてしまうからです。

また、重症化の予防効果、死者数を減らす効果については、この報告には詳しく書かれていませんので、本当の意義が把握できません。今後、検証されるのでしょう。   

お住いの自治体で、4回目の接種がいつ始まるのかはまだ分かりません。この結果を見ると、「一定の効果はあるものの、感染予防効果は限定的」と考えておいたほうが良いでしょうが、ワクチンの種類も増えるはずですので、政府からの発表を待って、どのワクチンをいつ接種するか判断していただければと思います。 
        




診療所便り 令和4年5月分より・・・(2022.04.30up)  

   



 
          

 

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